文庫の新たな展開
今後二、三年を視野におさめれば、どの家庭でもゲーム機などをテレビの前や横に置いて、チャンネルを切り替えるようにネットサーフィンし、いろいろなホームページを渡り歩くことができるようになる。
顧客をめぐる情報環境が大きく変わるのである。
そこで、従来とは違った顧客とのコミュニケーションの仕方、あるいは顧客との幹の結び方、モノの売り方の可能性が出てくる。
やり方次第で、大量の顧客や二人ひとり認識できる。
販売やサービスのあり方が大きく変革するという認識が広がったわけだ。
そして、変革を実現するために、データ・ウエアハウス、インターネット・フォン、ホームページ、データ・マイニング・ツールソリューシヨン(データ分別ソフト)、と言われる最新のITをどんどん採用していくことになる。
コールセンターなど、CRMで実現すべきことのひとつとして、コールセンター、ウェブ、セールスマンが連携して、同一の顧客に対してシームレスに対応できることが言われている。
コールセンターに電話をかけて商品説明を聞いたAさんが、店舗を訪ねてきたときには、「電話でお問い合わせいただいたAさんですね」といった具合に、コールセンターと連携して話を始めないといけない。
顧客は電話もかければ、ホームページも見るし、店舗にも行く。
そこで、一人の顧客を理解するためには、各コミュニケーション・チャネルへのコンタクト履歴をデータ・ウェアハウスにばんばん入れていかなくてはならない。
そのデータを分析すると、有力な顧客が見つかり、その顧客と良好な関係づくりができる。
そして、実現するための道具立てが、「ソリューション」という名前で提供されているのが現状なのである。
確かに言っていることは間違いないが、まだまだ利用を考える企業の担当者が甘い期待を抱きがちな傾向にある。
どんどんデータを入れれば、それだけよい関係づくりに役立つと、単純に期待が膨らむわけだ。
すると、どのようなデータを入手し、入れるかという議論が細かく、欲張りになっていく。
趣味、好きな音楽、旅行先としてどこに行ったか、ホームページへのアクセス履歴を入れたらどうかと、顧客情報の入手に非常に食欲になっていく。
一方で、発信する側についても電話、eメール、DMなど、様々な道具を用意することに熱心になる。
だが、ITコンサルティングのマインドとスキルをもった人、あるいはITコンサルタントは、ここで立ち止まって考えなくてはいけない。
顧客のデータを入手するだけで、本当にマーケティングやセールスは革新するのか。
ここで考えなければいけないポイントを一二つあげてみたい。
第一の問題点は、CRMはコストとの戦いであることである。
先ほど技術革新によって、eメール一件当たり一円だと述べた。
通常印別物を封書で送れば、封入物の印刷代と郵送料で150円や18O円かかることを考えれば、きわめて安価である。
しかし、たとえ送るための費用が一円になったとしても、誰かが送る情報のコンテンツを考えなければいけない、反応があればそれに応えなくてはならない。
これらの活動は無料というわけではない。
そのほかにも、設備をもつには投資が必要だ。
フォロー活動で人が電話を使ったり、顧客を訪問したりすれば、当然人件費という形で時間当たり数千円というお金がかかる。
したがって、誰に対してどれだけのコストをかけるか、どれだけの成果を望むかを考えないといけない。
そこで、収益性を頭に入れて、どの顧客にはどれだけのコストをかけてリターンがあるか。
あるいは、今はリターンが上がっていないけれども、関係を強く結ぶことで、これから収益が上がると考えられる顧客は誰かを判断しなくてはならない。
そのためには、マーケティング・プロセスをきちんと設計しておかなくてはならない。
CRMにどんぶり勘定のまま飛び込んでしまったのでは、何が儲かって、何で損しているのかもわからないまま競争に巻き込まれ、自滅してしまう危険性がある。
因調は、マーケティング・プロセスにおける計数管理をひと目でわかるように図にしたものである。
電話を使って顧客に製品を直接販売するメーカーを想定している。
この図を使っていわゆるダイレクト・セールスでどのような仕組みをとっているのかというエッセンスを簡単に説明し店舗をもたない業態で顧客からの引き合いを発生させるトリガー(引き金)は、専門雑誌などの媒体に掲載した広告である。
このとき、一つひとつの媒体ごとに掲載する電話番号を変えるのである。
すると、どの媒体は量的にどのくらい出稿すると、どのくらいのレスポンスがあるかを数字でっかむことができる。
経験を重ねることによって、コールセンターへのレスポンス量を正確に予測できるようになるわけだ。
一方、コールセンターでは、かかってきた電話が最終的にどういう結果を生んだかに対して徹底的にフォローできる体制になっている。
電話を受ける段階で、電話をかけてもつながらない(コールセンター側でとりきれない)呼損が発生する。
電話をかけたけれど、つながらなかった人たちはどれくらいいるのか。
一人当たりの平均応答時間はどのくらいか。
媒体ごと、要件ごとで異なるのか。
電話のオペレーターがデータを登録するための後処理にどのくらい時間がかかったのか。
顧客に応答までどれだけ待ってもらったのか。
そういったことすべてのデータをとっていくわけである。
そうすると、どの媒体に反応した顧客はどれくらいで、その人たちには一件当たりどのくらい時聞をかけているかがわかる。
また、媒体によって読者層が違う。
ある媒体の中心的な読者は、プロフェッショナルで製品をよく知っており、電話時間は短いが高度な内容を求められる。
一方、別の媒体の読者は初心者が多く、まずプロダクトの効用や利点から教えないといけないため、当然一件当たりの時間は長くなる上に、一人当たりの購入金額も小さい。
こうした顧客による違いを考慮して、顧客層に応じてどのくらいの時間とコストをかけて、どのくらいの収益をとるかをデータに基づいて考え、判断する仕組みが利益を生み出すのである。
マーケティング・プロセスを先に進めると、電話で受注できなかった顧客のリストが数日後にIT変革で求められるマインドとスキルはアウトバウンド(発信業務)のセールス・パーソンやオペレーターのところに出る。
それをもとにフォローしていくのである。
そして、そのフォロー結果が数字で捉えられ、データとして蓄積される。
フォロー時も、電話で行うのか、人が訪問するのか、メールを使うのか、手段はいろいろと考えられる。
どれを選ぶかは相手によって異なる。
それを判断できるように、マーケティング・プロセスがあらかじめ設計されていなくてはならない。
相手によって売り方やコミュニケーションの方法が異なるという意味では、そもそもダイレクト・マーケティングやCRMを導入して、費用対効果が上がる顧客か否かを事前に検討すべきである。
そのためには、既存の顧客をサンプリング調査して、お金をかけてもきちんとベイするお客さまがだいたいどのくらいの比率でいるのか、潜在的な市場の大きさを見ておくのである。
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